書類チェック自動化検討の進め方

Vol.016 2023年6月20日

RPAやAI-OCRの普及が急速に進んでいますが、弊社にも「人手で行っている書類チェックを自動化したい」というお問合せが増えています。そこで書類チェック自動化について良く頂く質問や検討のポイントをまとめました。

書類チェック自動化に必要なソフトウェア

書類チェック自動化に必要な主要なソフトウェアは以下のものがあります。

AI-OCR

紙の書類をスキャンしたイメージファイルから書類の各項目の記載内容をテキストとして読み取るために用います。

RPA

書類をスキャンしたイメージファイルをAI-OCRに引き渡したり、AI-OCRの読取り結果ファイルを後述のルールエンジンに引き渡したり、など各ソフトウェア間の情報連携に用います。小規模業務の場合、RPAを中心に処理プロセスを構築することができます。

イメージワークフロー

複数種類かつ大量の書類を取り扱う大規模業務の場合、イメージワークフロー(BPMS: Bussiness Prossess Management Systemともいう)を用いて処理プロセスを構築するのが一般的です。イメージワークフロー導入時には書類デジタル化を前提に業務フローの最適化、いわゆるBPR: Bussiness Process ReEngineringを同時に行うことで高い業務効率化効果を実現できます。

ルールエンジン

テキスト化された書類データを、業務要件に基づいてチェックするために用います。書類チェックは、項目の必須チェックや形式チェックのような単純なものから、複数書類間を跨ぐような複雑な業務要件に関わるものまで多種多様かつ多数のルールが存在するのが特徴で、ルールエンジン適用の効果が高い領域です。

以下は大規模業務における一般的なシステム構成図です。

大規模業務における一般的なシステム構成図

書類チェック自動化実現の費用感

書類チェック自動化の費用は、チェック対象となる書類の種類や物量、チェックに関わる業務要件の数や複雑性により決まります。そのため一概に費用感を示すことは難しいのですが、中規模業務で初期費用が数百万~数千万円、年間ランニング費用が数百万円という印象です。また大規模業務の場合は、導入時にBPRも実施するため開発期間も1~1.5年程度と長期化し、初期費用も大きく数億円程度、年間ランニング費用は数千万円程度になることもあります。

書類チェック自動化の投資対効果の考え方

書類チェック自動化の投資対効果は、自動化後に削減される作業工数を導入効果として、初期導入費用と年間ランニング費用を3~5年で回収できるか検討するのが一般的です。定性的な判断材料としては、業務属人化の防止や作業者の教育負担の軽減なども評価材料とすることがあります。弊社の大規模業務における実績では、人手で70分程度かかっていたチェック作業が自動化により20~30分程度(1/3~1/2の作業時間)になりました。業務規模が大きくなるほどチェック自動化の効果が高くなる傾向にあります。

書類チェック自動化の注意事項

書類チェック自動化には幾つか注意点があります。一番重要なものは、AI-OCRの読み取り精度は100%でない、ということがあります。読み取り精度が99%のAI-OCRは、100項目あたり読取りミスが1件程度、という意味です。つまり、100項目ある書類を読み取る場合は1項目程度の読み取りミスが発生することになります。従って、高いデータ品質を求められる業務の場合、AI-OCRの読み取り結果を必ず人が確認して、ミスがあれば人手で訂正するための工程、いわゆるベリファイ工程を組み込む必要があります。しかし、ベリファイ工程は、書類のイメージとAI-OCRの読み取り結果を比較するという単純な作業です。そのため人手で書類チェックを行うときのように担当者が業務要件を理解している必要はありません。その意味で人材の教育負担を大幅に抑えることは可能です。

以上、書類チェック自動化に関して、よくある質問について弊社の経験を記載いたしました。
皆様が書類チェック自動化を検討される際の参考になれば幸いです。また、ここに記載していないより具体的なノウハウもありますので、弊社にお気軽にお尋ねください。